マクロビオティックコラム

初めての「完全粉からセイタン作り」体験記

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セイタンというものに、マクロビオティックの料理レシピ本ではたまにお目にかかっていた。

小麦グルテン、つまり生麩を薄味で煮付けたもののことで、蒸したものはコーフーとも呼ぶらしい。カツなどにして肉の代わりに使ったりするという。

確かに素晴らしいアイディア料理だとは思う。しかし、「そこまでして……」という思いも拭えなかった。

第一、作るのがとても面倒くさそうだ。強力粉を水でこねて団子にし、それを水で洗ってグルテンだけにして……? いやー、考えるだけでも大変。

グルテン粉なるものを買えばもっと楽にできるらしいが、そんな、セイタンやコーフーにしか使い道のなさそうな食材を買う気も起きない。

瓶詰めで売られてもいるらしいが、そこまでして食べたいとも思わない。

しかも小麦粉からわざわざグルテンだけ抽出するなんて、もったいない。小麦粉の中に、たんぱく質は10%くらいしか入っていないのだ。90%を捨ててグルテンだけ食べようだなんて、どれだけ贅沢なんだ。

もう、いいよ別に肉の代用食なんかなくても……。肉にそこまで未練ないし……。普通に、玄米ご飯と小松菜の煮浸しみたいな食卓で十分ですけど……。

そこらへんで簡単に手に入るもので、楽に作れるマクロビオティック料理が好き!

そう思い、ずっとセイタンという存在は無視してきた。

だが、私はまがりなりにも「マクロビオティック羅針盤」なるサイトを運営する身。マクロビオティック実践者であり、マクロビオティック研究家でもあることを自負している。

だったら、個人の好みはともかくとして、セイタンというマクロビオティック的食材のことも知った方が良いのではないか?

一体どんなものなのか、興味はあるではないか。

私は、「よし」と気持ちを奮い立たせた。セイタンって何? その好奇心だけを原動力に、セイタン作りに取りかかった。

参考にしたのは、一番時間がかからず手順も簡単そうだった中島デコさんの「かんたん、おいしい! マクロビオティックはじめてレシピ」。

まず完全粉と水を合わせてこねて団子にし、水に浸けて二時間。

コーフー(セイタン)

ここまではまあスムーズに進んだ。だが次の手順が地獄。

水に浸け終えた小麦粉団子をいくつかに分けグルテン以外のデンプンやフスマを流すために一つずつ水でもみ洗いしていくのだ。

本には八等分と書かれていた。そのつもりで最初は小さな団子を取り分け、流水の下でもみ洗いを始めた。だが、これが、なかなか終わらない!

洗っても洗っても、ぎゅっと絞ればデンプンの白い濁りが出てくる。最後はタオルをゴシゴシ洗うような感じで力強くもみ洗いして、ようやく水に浸けても濁りが出なくなった。

……この作業を八回? うわあ~、やってられな~い!

私は八等分の予定を急遽五等分に切り替え、大きな団子を水洗いしていくことにした。

しかしそれでも五個の団子の水洗いはきつかった。わずかに前傾姿勢で作業をしているから、腰も痛くなってくる。徐々にあらわになってくる繊維状のグルテンは弾力があり、水を含ませて握って絞るということを繰り返していると握力もなくなってくる。

「なんじゃこの大変さはぁぁぁ~! もう二度と作るものかぁぁぁ~!」

洗い続け、もみ続けて30分。ようやくすべての団子をグルテンのかたまりにすることができた。で……できた……これがかの有名なセイタンの材料……。

コーフー(セイタン)

触るとひんやりしていて、グニグニした感触が気持ちいい。苦労して作った分だけ、愛着がわいた。完全粉特有の茶色いつぶつぶ(フスマ)も、大部分が流れてしまったとは言え少し残っている。体に良さそうだ。

早速、鍋にだし汁、昆布、生姜、長ねぎ、グルテンを入れて煮込んでいく。

コーフー(セイタン)

煮汁を吸ってぶわっと膨らんだグルテンは、もうグルテンではない。「セイタン」の誕生だ!

できあがったセイタンを少しちぎって食べてみる。ふわふわ、プリプリしていて、食感も匂いもイワシのつみれ団子のようだ。う~ん、これがあのマクロビオティック界きっての謎の物体、セイタンか。ふっふ、面白い食材を手に入れたぞ!

私はこのセイタンを使って、早速三種類の料理を作ってみた。

セイタンと長ねぎの照り焼き

セイタンと長ねぎの照り焼き

セイタンの唐揚げ

セイタンの唐揚げ

セイタンカツ

セイタンカツ

セイタンで作った料理は、いちいち美味しかった。セイタンそのものが美味しいと言うより、照り焼きのタレの味や唐揚げの漬けダレの味が良いということなのだが、セイタンはその濃いタレの味によくなじんでいた。

臭みがほとんどないのは最初に香りよく煮付けて下味をつけたおかげだろう。本当に肉料理のようだ。

別に、肉を食べたきゃ肉を食べればいいと思ってはいるけれど、これはこれで美味しいかもしれないなあ……。

グルテン抽出作業の大変さに根を上げ、「もう二度と作るものか!」と目をつり上げていたのも忘れて、私はセイタンに好意を抱き始めていた。

これならもう一回作ってもいいなあ。というか、もう一度食べたいなあ。

私は腕をまくり、再びセイタン作りに取りかかることにした。だが、また同じことをやったのではつまらない。今度は「グルテン粉」なるものから作ってみよう。

グルテン粉は200gで1000円もする高価な粉だが、セイタンにして使い切る自信がついたので二袋買い求めた。

さあ、グルテン粉でセイタンを作ってみよう!

(「初めての「グルテン粉からセイタン作り」体験記」につづく)

(今回作った『完全粉セイタンのレシピ』はこちら)


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