自分が中庸状態を保てているか、そうでないか、判断するのにわかりやすい指標が女性にはある。月経周期だ。
「28日周期」かどうかというのが一つの目安になる。それよりも短ければ陽寄り、長ければ陰寄りだ。(*1)
私は初潮以来、月経周期が31日で安定していた。二十代も半ばを過ぎたころから周期が長くなり、38日周期の月も出てきたりして、まあそれでも定期的に来ているのだからいいかと思っていたのだが、マクロビオティックを学んで玄米食にしてから周期が短くなり、32日周期にまで回復した。
私はそれで満足していた。28日周期には憧れるけれど、自分には縁がないと思っていた。体調も良いし、このまま推移すれば良いと考えていた。
だが、マクロビオティックを始めて一年半後の2008年10月。なんと、28日周期で月経がやってきた。そしてちょうどそのころ、私は自分の心の変化を感じることが多くなった。
まず、人生に対して欲が出た。少し前までは、「一番目の願いさえ叶えば、あとは何もいらない」という、ストイックなんだかロマンチックなんだかわからない思いを秘めて過ごしていた。
だがそれが、「一番目の願いが叶ったら、あのときの夢にもまた挑戦してみたいな。それを叶えたら、ついでにあんなこともこんなことも……グヒヒ」と、大きく希望を膨らませるようになった。
「最近欲深くなったな……」と自覚するほどで、どうしたものかと思っていたのだが、『限りない欲求は健康の証であり、(略)欲が大きければ大きいほど、私たちの人生は豊かで多彩なものになり、欲がなければ、進歩も発展も人生の楽しみもありません。』(*2)との久司氏の言葉に目を見開かされる思いがした。
欲が出てくるのも、健康の証であったか! だとすれば、「この願いさえ叶ったら……」と思い詰めていた自分は、ちょっと元気不足だったということなのかもしれない。
二つ目の変化は、情熱がほとばしってきたこと。自分の好きなことや目標に向かい合うとき、透明な炎が立ち上るかのように、涙が出そうなくらい、心が燃えたぎるのだ。
今までも情熱はあった。だが、その情熱を覆っていた一枚の薄い皮がむけたような感覚なのだ。熱く、みずみずしく、そんな情熱を感じているときはとても気分が良い。
この変化もちょうど10月に入る頃から起きてきた。だからおそらく、このパワフルさも中庸がもたらしてくれたものだろう。
「中庸の精神」というと、禅僧のような、穏やかで凛としたものをイメージしていた。だが実際は、そう静かなものでもなくて、ウキウキするような、意欲的でエネルギッシュな状態なのだとわかった。
体の中庸化による心の変化は私にとっては素晴らしい経験だった。「食べ物で体だけでなく心も変わる」というマクロビオティックの力が不思議で、感心もした。玄米ご飯と野菜、海藻、豆を食べているだけで、ここまで変わってくるものか……。信じていたから実行していたはずなのに、なんだか狐につままれたような気持ちにすらなった。
これからも「月経周期28日」を保てるかはわからないが、せっかくやってきたこのチャンスを逃したくないという思いは強い。体をどうやったら中庸にコントロールできるか、毎日の食事で実験しながら、揺るがないコツを見つけたいと思っている。
追記:2018年の心境
上記コラムを書いてから十年が経った。
読み返してみて、「あれっ、自分って、そんな感じだったっけ?」と若干戸惑った。
十年前の私は、色んな希望(欲)を持っていて、燃えたぎるような情熱を持っていたらしい。
今はどうか? と問われると……。
希望(目標)があり、それに向けて努力している。努力し続けている。という感じだ。
十年前よりは落ち着いていると言えるのかもしれない。
努力は「続ける」ことが大事。「続ける」ための心の持ちようを、この十年で少しは身につけられた気もする。
さらに十年経ったら、自分はどう変わっているだろうか?
とにかく向上目指して日々頑張っていきたい。