マクロビオティックコラム

初めての「梅酢で寿司飯」体験記

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マクロビオティックを本格的に勉強し始めてからそろそろ一年。マクロビオティック料理の世界では当然のように使われているのに、なかなか手を出せなかったものがある。

梅酢だ。

梅酢とは、梅干しを買ったときに容器にちょっぴり入っている赤いタレ。梅を塩で漬けたときに上がってくる液体だ。

そんなものを「酢」と言っていいのか。

酢といえば、米酢、黒酢、りんご酢……。どれもツンとした匂いがして、いかにも酢という感じ。酢酸発酵させて作るのだから、製造法からして酢と梅干しのタレとは根本的に違う。

なのに、梅「酢」。

見た目はとても綺麗。赤く透明で、ジュースのよう。シソの爽やかな香りがして、そのまま飲んでしまいたくなるくらい良い匂い。けれど、ちょっぴりスプーンに出してなめてみたら、ビリッと舌が痺れた。

しょ、しょっぱい!!

酸っぱいというより、しょっぱい。それもそのはず、原材料は「有機梅、有機シソ、食塩」。どう見ても酢っぽくない。……そんな「酢」に対する先入観に、梅酢を酢として利用する勇気をくじかれ続けてきた。

けれど転機は来た。私の誕生日。ご馳走として、鉄火丼を作ることになった。寿司飯を作らねばならない。材料を確認して、はたと手が止まった。寿司飯に使う「寿司酢」には、糖分を入れなければいけない。

いや別に、白砂糖を使うわけではないのだ。粗糖なのだから、気にする必要はない。そうは思ったけれど、このところ私はジーンズのボタンがきつくなってきていたためわりと厳格なマクロビオティックを実行していて(高価なジーンズだったので履けなくなるわけにはいかない!)、粗糖すら一週間ほど一切摂っていなかった。

それを途切れさせるのがなんだかもったいなく思えた。

私の中では「最も厳格なレシピ集」である「リマクッキング」を開き、寿司飯の作り方を見てみた。なんと、炊きあがったご飯3合に「梅酢30ccを同量の水で薄めたもの」を混ぜるだけ。それで寿司飯とするらしい!

マクロビオティックでは、「酢」は陰性とされ、あまり摂らない方が良いものに分類されている。だから、陽性の「梅酢」を代わりに使うのは道理ではあるのだ。それにしても梅酢だけとは……。

私は迷った。ご飯に梅酢を混ぜて、寿司飯の美味しさが出るのだろうか? 酢に糖分を混ぜた「寿司酢」だからこそ、あのテリや甘酸っぱい旨さが出るのであって、梅酢を混ぜただけではご飯がただしょっぱくなるだけなのでは?

けれど、あの梅酢の良い香りを思うと、「もしかしたらゆかりご飯のような感じになるかもしれない」という期待もわいた。梅干しを入れて炊いたご飯も、ほんのり酸味がきいて美味しいものだ。3合ものご飯を炊いて梅酢をかけ、うまくいかなかったら目も当てられないなと思いながら、この際だから挑戦してみようという気になった。

私は、寿司飯用に酒を多く入れたご飯を炊いた。レシピ通り、梅酢に水を混ぜたものを用意する。その赤い水を大さじにすくい、一杯、二杯……。合計四杯ふりかけた。

「大丈夫なのかな……」湯気を上げるご飯をしゃもじで混ぜ、一口食べてみた。あれ……。意外なほどに、強さがない。かすかに、梅の酸味と塩を感じるだけだ。

確かに寿司酢を使ったときのような、それだけで味つけご飯のようにばくばく食べられるような味わいではない。けれど、これでも十分、「寿司飯」としていけるような気がした。

あっさり、さっぱりした寿司飯の完成だ。ここにマグロの漬けをのせて食べるのだから、このくらいすっきりした寿司飯の方がくどくなくて良いのかもしれない。

梅酢は、酢より主張の少ない、軽やかな調味料であった。酢と違ってむせるような酸っぱさがないので、利用範囲はもしかしたら酢より広いのかもしれない。

梅酢に抵抗感がなくなったところで、さて、これからどう活用しようか楽しみなところではあるが、使うまでに時間がかかりすぎたせいで購入から一年近く経ち、賞味期限が今月末に迫ってしまっている。

ああ、まだビンにいっぱい入っているのに……。


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