マクロビオティックコラム

カップ麺もスナック菓子も、見ざる、言わざる、聞かざる。

マクロビオティックを本格的に学ぶまで、好きでよく食べていたものがある。

カップ麺とスナック菓子だ。

添加物が多いし、材料の出自も怪しく、とうてい体に良いとは言えないということはわかっていたから、なるべく買わないように意識してはいた。

それでも、カップ麺は月に1~2度、スナック菓子に至っては週に2~3袋は食べていたように思う。

マクロビオティックの知識を身につけてからは、本格的にその「やばさ」を感じ、買う頻度を極力減らすために精神に強い負荷をかけた。

つまり、それまでは「欲しいな」と思ったらつい買ってしまっていたのを、はっきりと我慢するようにしたのだ。

カップ麺からはわりと早く足を洗えたが、スナック菓子から離れるのは辛かった。食後、スナック菓子を持ってパソコンの前に座り、おもむろに封を開け、ボリボリと食べながらインターネットをするのが好きだったのだ。なかば習慣だった。

スナック菓子の代わりに焼きおにぎりを食べてみたり、手作りのパンを食べてみたり、飲み物でごまかしたりしているうちに、スナック菓子を食べる頻度を週に一度くらいにまでは減らせた。

しかしどうしても、その「週に一度」がやめられない。

チーズのたっぷりかかったポテトチップが置いてある棚を通りかかると、その味が口の中に蘇る。「ああ、食べたいなあ、でもなあ……」とためらうのだが、最後には「う~ん、白砂糖が入ってるわけでもないし、ちょっとくらいはいいんじゃない?」とカゴに入れてしまう。 

そんな日々がだらだらと続いていたのだが、唐突に終止符は打たれた。2008年の7月下旬に親知らずを抜いて、発熱して二日ほど寝込み、ようやく体調が回復してきた頃。ベッドの中にいた私は、頭の中で「ポテトチップが食べたい」という声をぐるぐるさせていた。

親知らずを抜く前に買って、一階の食品庫の中に入れておいたものがあったのだ。しかも私の好きな、チーズたっぷり系。

しかし時刻はすでに午前0時近く。そんな夜に、病み上がりでスナック菓子を食べたら体に良くない。我慢しよう、今日は我慢しよう……。そう思うのだが、食べたくて仕方ない。いても立ってもいられず、私は暗闇の中でカッと目を見開いてベッドから飛び起き、一階へ駆け下りた。

食品庫を開け放ち、お目当てのポテトチップをわしづかみにする。勢いよく袋を開け、一心不乱に食べた。一袋では物足りず、二袋目に突入。半分まで食べたところで胸焼けがして、人心地がついた。胸焼けがするほどスナック菓子を猛烈に食べたのは初めてだった。

残りは明日でも食べようと、袋の端を折りたたんで洗濯ばさみで留めた。だが、この残ったポテトチップを、私はそれ以降食べることはなかった。買い足すこともしなかった。あれほど断ち切れなかったスナック菓子への執着が、なぜか消えたのだった。

あれから半年。私は一度もスナック菓子を食べていない。スナック菓子のコーナーに立ち寄ることもなくなった。スナック菓子から完全に卒業できた、スナック菓子なんぞにぴくりとも心を動かされない自分になれた、バンザイバンザイと思っていたのだが。

自分を試すような気持ちで、この正月にスーパーのスナック菓子コーナーに行ってみた。きっと、「え~、こんな油っぽいもの、全然食べたくな~い」と思うだろうと思っていた。しかし、久々にスナック菓子のポップな袋を見て思ったのは、「あ、美味しそう」だった。

「美味しそう」? そんな風に感じる心はまだ残っていたんだ! 私は動揺した。商品に手を出すほどの衝動はなかったから、これ幸いと私は逃げるようにその場を離れた。

危ない……。かつて好きだったものは、それを食べる習慣が抜けてからも「美味しそう」なんて思うものなんだ。じゃあカップ麺はどうだろう? カップ麺はさすがに大丈夫かな……。

カップ麺が陳列されている棚の前に赴き、一つの商品にじっと見入った。「美味しそう」。確かに、そう感じた。

やばい! やばすぎる! 私はカップ麺から目をそらし、足早にコーナーから立ち去った。

マクロビオティックに慣れ、カップ麺やスナック菓子を食べずにいられるようになったとは言え、油断はできないのだ。

頭の中に日光東照宮の三猿が浮かぶ。「見ざる、言わざる、聞かざる」。カップ麺やスナック菓子のことは、見てはいけないし、口にしてもいけないし、聞いてもいけない! それじゃなきゃ、いつふらふらっとまた手にしてしまうかわからない。

同じ実験を、私は焼肉屋のチラシやお菓子のレシピ本を使っておこなってみた。結果、肉汁のしたたる焼肉の写真を見れば口の中に唾がわいたし、砂糖とバターをたっぷり使って生クリームまでのせられた焼きりんごを見てもうっとりしてしまった。

思うに、「味を知ってしまっている」ことが原因なのだろう。それを食べたときの楽しかった雰囲気まで思い出すから、余計に顔がにやけてしまう。

マクロビオティックで鍛えられて、何を見てもびくともしないと思っていたのは間違いだった。食べない方が良いものをこれからも食べずに過ごすには、「見ざる、言わざる、聞かざる」の努力を続けなければいけない。

……いつの日か、そんな努力をしなくても、石のようにクールな気持ちでスナック菓子と相対せる日が来るのだろうか?


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