マクロビオティックコラム

「チャヤマクロビオティックレストラン」探訪記

マクロビオティックとは基本的に、家で、自分で実行するものだと思っている。だから、外食にまでマクロビオティックを求めはしない。

諦めているとも言える。マクロビオティックを謳うからには、食材はなるべく国産、有機栽培、調味料も自然派の良いもので固めなければいけない。

個人でそれらのものを揃えるのも一苦労なのだから、ましてや大量生産が必要で利益もあげなければいけない外食産業に期待することはできない。

だから、マクロビオティック料理を出すレストランがあると知ったときには驚いた。その名も「チャヤマクロビ伊勢丹新宿店」。

マクロビオティックは自宅で十分に実行できているし、やっぱり外食となると値が張るし、その日の自分の陰陽バランスに合わせて調理できるのは自分だけなのだから、あえて外でマクロビオティック料理を食べる必要はない。

だが、せっかく東京に来たのだ。どんなマクロビオティック料理が、一般客に広く開放された場所で、どのように提供されているのか一度は見てみたい。

好奇心を胸に、私は伊勢丹新宿店を訪れたのだった。

チャヤマクロビオティック

席に通され、私は辺りを見回した。店内は、有名フレンチレストランのような重厚感ある雰囲気だ。

マクロビオティックというと私にとっては「玄米ご飯に、山で採った野草を味噌汁の具にして食べる」という感じの素朴なものであったから、チャヤマクロビオティックレストランのゴシック調な洋風さには驚いた。

チャヤマクロビオティック

注文したのは、店の前のボードにも大きく掲示されていた「チャヤランチ」。税込み2625円というのはなかなか高級な値段で、「これだけあればおにぎり・ごぼう汁定食が五日間は食べられるよな」なんて思ったが、う~ん、仕方ない!

メニューは、前菜、メインディッシュ、主食、デザート、飲み物を、提示された中から自由に選ぶことができる。

ざっと見て、「ジャガイモ」や「鮮魚」「帆立」が目についた。なるほど、あまり厳格ではない、カジュアルで親しみやすいマクロビオティック料理なんだな。マクロビオティックのことを何も知らない人も食べにくるだろうから、このくらいの幅はあった方が良いのだろう。

できれば「主食も野菜もたっぷり」というような、家で食べる感じの健康的なメニューを選びたかったが、洋風なスタイルのせいかどうもそういうわけにもいかないようだ。

まあいいか、ここは単純に、人の作ってくれたマクロビオティック料理を楽しもう。そう割り切って、今まで食べたことのないものや興味のあるものを注文した。

にこやかに注文を受けた店員が下がってから20分。料理はなかなか運ばれてこなかった。私は、店内の和やかな空気を楽しみながら、ゆったりと料理を待っていた。まあ、マクロビオティック料理だし、時間もかかるんだろうよね。

そうしたら、一人の店員に声をかけられた。お待たせして申し訳ありません、今、料理を確認してきますと。あら、別にいいのよ~と余裕をかましていた私だったが、どうやら、注文がうまく厨房に伝わっていなかったのが遅れの原因らしかった。

「申し訳ありません。こちら、よろしければ……」と、私の前にカップスープが置かれた。店側が、気を遣ってサービスしてくれたのだ。まあ! これはもしかして、315円プラスするとつけてくれるという「本日の野菜カップスープ」では?

 

チャヤマクロビオティック

確かに待ちはしたけれど、こんなスープが飲めるなんて幸運だ! 私は早速そのスープを口に運んだ。濃厚な熱々のコンソメスープに、柔らかく煮えた薄切りのセロリやにんじん、玉ねぎが美味しい。

チャヤマクロビオティック

次に運ばれてきたのは前菜の「グリーンピースと新じゃが、雑穀のコロッケ豆腐タルタルソース」。豆腐タルタルソースというのに興味があったのだ!

カリカリのコロッケの中にはグリーンピースが色鮮やかに顔をのぞかせている。豆腐タルタルソースをたっぷりつけて食べて、頭の中が「!」でいっぱいになった。

これはすごい! 確かにタルタルソースだ。かすかに豆腐の香りがするクリームに酸味がよくきかせてあって、玉ねぎとピクルスのみじん切りがタルタルソース独特の風味を醸し出している。

よく考えるなあ~。さすがマクロビオティック料理だ。

チャヤマクロビオティック

次はメインディッシュの「セイタンと雑穀のハンバーグ木の子と野菜の香味ソース」と、主食の「玄米ごはん」。

チャヤマクロビオティック

まず、ごま塩が振られた玄米ご飯から食べてみる。するととってもふっくら! 黄色いぬか層から白米が半分飛び出している米粒の姿も完璧。「丁寧に、上手に炊けていますね!」と、厨房の人に一声かけたいくらいだ。

チャヤマクロビオティック

固めに香ばしく焼かれた雑穀のハンバーグには、ポロポロとした「たかきび」がたっぷり入っていた。そうそう、このたかきびってやつを使ったハンバーグ、食べてみたかったんだよね~。たかきびってなかなか自分では買わないし、買ったとしても高価で、ハンバーグにするなんて豪勢な使い方はできないと思うから、いい機会だわ!

細かく刻まれた干し椎茸が味わいに深みを与えている。甘みのある醤油ベースのソースも美味しい。上にのせられているのはセロリの葉。ああ、さっきの野菜スープでは実を使っていたから、余った葉っぱを飾りにしているのね。密かに一物全体……。

せっかくのマクロビオティック料理なのだから、流儀もマクロビオティックに! と思い、私は一口ごとに箸を置いて50回噛んで食べた。う~ん、外食で、こんなによく噛んで食べたことはないぞ! 噛むにつれ、満足感も高まっていく。

すっかりお腹も心も満たされたところでデザートだ。

チャヤマクロビオティック

初めてのマクロビオティックスイーツ! こんな洋菓子は一体どれくらいぶりに食べるだろう。もう洋菓子など食べることもないと思っていたし、食べなくても平気と思っていたのに、まさかこんな形で再会するとは。

けれど私は、菓子専門学校に通っていた頃の妹と有名なケーキ屋巡りをしていたことがあるから、洋菓子の味には一家言あるかもよ。私を満足させられるかな? フッフ。と、試すような気持ちで食べてみたら……。

おおっ? 苺がたっぷりでジューシー! そしてこの豆腐クリームというやつ! 豆腐をピューレにして菜種油やメープルシロップを混ぜて作ると説明を受けたけれど、これ、美味しいじゃん! 

食感はもったりと固めでクリームチーズのよう。味は、優しい甘さのヨーグルト系だ。

ベーキングパウダーで膨らませたというスポンジケーキも、豆腐クリームを引き立てている。

ベーキングパウダーは膨張する力が強く陰性過ぎるので食べない方が良いと桜沢如一氏はおっしゃっていたから少し気になるところではあるが、卵を使わないでスポンジケーキを作るとなるとベーキングパウダーを使わざるをえないだろう。

有精卵とベーキングパウダーとどちらが自然なのか? どちらがより良いと言えるのか? 様々な考え方がありそうで、結論を出すのは簡単ではない。

まあいい! マクロビオティックの理念に沿おうとすごく頑張ってくれている、その心がありがたいから。

洋菓子というと、食べるときにいつも罪悪感を覚えたものだ。ああ、砂糖がいっぱい入っているよな、太るよな、体に良くないよな、生クリームで動物性脂肪とコレステロールの摂りすぎになっちゃうよな……と。

それが、白砂糖を使わないで、生クリームも使わないで、ここまでのケーキが作れるなんて。安心してお菓子を食べられるという心地よさを初めて知った。

しかも、洋菓子というと泡雪のように儚くてお腹にたまらないというイメージだったが、マクロビオティックスイーツは豆腐などのしっかりした材料が使われているせいか、少量でも満腹感が得られるのだ。

味に満足! 罪悪感を抱かないから心穏やか! そしてお腹にどっしり! というのがマクロビオティックスイーツ。

なんだか、この世には「動物食界」と「植物食界」という相容れない領域があり、その「植物食界」に迷い込んだような気分だった。

 

チャヤマクロビオティック

ケーキと一緒に飲むのはこれまた初体験の「穀物コーヒー」。添えられているのは「メープルシュガー」に「豆乳」。……本当に頑張るよねえ……。

コーヒーも、数年前まではよく飲んだものだ。さて、穀物コーヒーとは一体……。

一口すすって、苦笑いがこぼれた。うん……これは、確かにコーヒーだ。すごいな。薄いコーヒーにこんなのがありそう。

喉の奥でよくよく味わうと、濃く煮出した玄米茶のような風味がある。けれど、やっぱり「コーヒー」と呼ぶにふさわしい味なのだ。

コーヒーと違って、飲んでも体調がおかしくなったりしない。むしろスッキリする。味わいを楽しみながら、ブラックで飲み干してしまった。(穀物コーヒーでブラックというのもなんだかおかしい気がするが……)

う~ん、お腹いっぱいだぞ! 精算を済ませて店を出ると、空席待ちのお客さんがずらりと椅子に座っていた。マクロビオティックのレストランが繁盛している。うん、いいことだ!

ランチで2625円は確かに気安い値段ではないが、どうしても外で食べなければいけないときや、誰かを間違いのない店に連れて行きたいとき、こういうレストランの存在はありがたいだろう。

今回特に収穫だったのはマクロビオティックスイーツの美味しさ! マクロビオティックを実践すればどうしても洋菓子には縁遠くなってしまうが、ここのスイーツなら食べられる。

だが! やっぱり忘れちゃいけないのは、マクロビオティックというのは自分でやるのが本筋だということ。『自分自身で、自分のために、自分の力で』(*1)実践するのがマクロビオティックなのだ。

チャヤマクロビオティックレストランの食事は美味しかった。けれど、そこに浮き足立たず、執着せず、軸はしっかりと自分の中に保って、自分だけのマクロビオティックをこれからも変わらずに地道に実践していきたいと思う。


*1桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』p.9
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