マクロビオティックコラム

人間の深みが増すとき~苦しみで、人間としての味わいが増す

マクロビオティック創始者の桜沢如一氏は、寒さや貧しさ、ひもじさなどの「陰」を大切にしておられる。ご自身がそのような環境下で育って、得たものが大きかったという思いが強いからだろう。

寒さは体を鍛え、貧しさやひもじさは米一粒への感謝の心を育む。『ヒモジサを知っているモノは教えられずにメシ一粒、油半滴でも器にのこさないモノである。』(*1)

普通は避けたいそれらのことこそが人間を磨き上げるのだと知り、以来、私は「寒さ、貧しさ、ひもじさ」を、外部の物質的環境から与えられる陰であることから「外的陰がいてきいん」と呼んで、自らを向上させる道具として意識してきた。

おかげで、外的陰がもたらされたときに嫌がったりするのではなく、「今、私は鍛えられているのだ」と、どこか得をしたような気持ちになれるようになった。

だが、外的陰が人間を強くするということに関して、雰囲気としては納得できていたのだが、理屈がよくわからなかった。

テレビ番組で、「北海道の寒く荒れた海で育ったホタテは身が締まっていて美味しい」と寿司屋の主人が言っているのを聞き、「つまり人間も、外的陰にさらされるとキュッと身が締まって美味しくなるのかな?」なんて考えたりもした。

その考えは、きっといい線を行っていた。もうすぐわかりそうだなあと思っていたときに、私の思いを裏付けるようなニュースをネットで見つけた。

『うまみ引き出す「寒さ」 「日本の伝統的製法」に海外も注目』という、食品の氷温技術について書かれた産経ニュースの記事だ。(*2)

『“凍りそうで凍らない状態”は、食品や食材にこんな利点をもたらす。まず、凍結から身を守ろうとする防御反応から、細胞内に不凍物質を蓄積する。この物質こそが、うまみ、甘みの成分であるアミノ酸や糖類。霜が降りるこの時期、白菜が甘みを増すのと同じ仕組みだ。』

「凍結から身を守ろうとする防御反応から、細胞内に不凍物質を蓄積する」という箇所に目が釘付けになった。つまり、外的陰に襲われたとき、食品と同じように人間も身を守ろうとして防御反応をはたらかせ、外的陰に負けない「不凍物質」を心に生み出すのだ。

この不凍物質こそ、人間の強さであり深さの元となるものなのだろう。食物は美味しくなる。人間としてのうまみもきっと増すのだ。

凍りつきそうに辛い日々も、不凍物質を作って耐えれば、妙味を醸す人間になれる。そう考えると、外的陰もなかなか魅力的に思えてくるではないか?

ただ、不凍物質は“凍りそうで凍らない状態”のときにだけ生成されるもの。本気で凍ってしまうような状態になると、変質したり、生命が絶えてしまったり、あまり良いことがなさそうだ。

求めるべきは、凍らないぎりぎりの外的陰。その絶妙なさじ加減は神の采配に任せるしかない。

神様、そこのところよろしくお願いしますね!


*1桜沢如一著『病気を治す術、病人を治す法』p.98
*2 2009.1.18配信
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