マクロビオティックコラム

病気を受け入れる

マクロビオティックを学び始めてから、私はずっと健康を追い求めてきた。

私にとって病気は忌み嫌うべきものだった。頭では「病は健康のウラ」とわかっていたが、どうしても病気にはなりたくなかった。

「健康ではない人の言うことは信用しない」「正食者は風邪などひかない」という桜沢如一氏の言葉を私は真正面から受け止め、胸に抱いてきた。信用に足る人間になるには健康でいなければいけない、マクロビオティック実践者の証として風邪の一つもひいてはいけないと自分を奮い立たせてきた。

そして、マクロビオティックを実践して健康を向上させ、きちんと維持させている自分を誇らしく思ってもいた。

だが私はやがて、あろうことかマクロビオティックで築き上げた健康に飽いた。健康は素晴らしかった。快適だった。こうしていれば体調が保てるという食事方法も確立できていた。それを継続しさえすれば、私はずっと健康でいられるはずだった。

なのに、つまらなくなってしまった。これから先、何十年も、似たような食材で同じような食事を続けるのかと思うと、決まった未来を生きるような息苦しさを感じた。

何か、他に方法はないのか? 私は刺激を求めた。そして、マクロビオティックではない健康法にも挑戦して、結果、体調を崩した。しかも、ひと月の間に二度も。

一回目は軽い夏バテ程度で回復も早かったから「あーあ、やっちゃった」くらいの気持ちでいられたが、二回目は高熱と下痢、頭痛をともなう苦しい全身症状が出て、精神状態も地に落ちた。

断続的に押し寄せる腹痛の波に悶え、熱にうなされる私には、もはや反省も後悔もする余裕はなかった。

天に対する悔しさ混じりの怒りだけが、私に暗い力を与えていた。

どうしてこんな苦しい思いをしなければいけないの? 私は頑張ってきたのに。もうこれ以上頑張れない。天のバカヤロー、あなたを信じてここまで来たのに。神も仏もありゃしねえ。

天を思いきり呪ったあとは、悲しくて泣いた。もういやだ、帰りたい、北海道に帰りたい……。

最悪だった。夢も希望も消え去り、真っ暗闇に落とされた気分だった。けれどそんなさまよう自分を、私は絶対に否定したくなかった。

はみ出そうとしたりせず、おとなしくマクロビオティックのワクにおさまっていれば病気にもならなかったのだろうが、マクロビオティックではない方法にあえて挑戦した勇気を私は認めたかった。

風邪で苦しんでいる自分を認めるには、風邪自体を認める必要があった。

今まで恐れてきた「病気」を、自分の人生の一部として受け入れなければいけなかった。

そもそも病気とは何ぞや? 私は考えた。

マクロビオティックでは、自然な食物を食べていれば、野生の動物たちのように病気もせずに命をまっとうできると言うけれど、野生の動物の死因など調べてみなければわからない。もしかしたら病気で死んでいる個体もあるかも。

健康が自然で病気が不自然というのは本当だろうか? 健康の方が不自然で病気が自然ということはないだろうか? 

だって、健康というのは、かなり意識して節制しないと得られない。「自然」状態で野放図に飲み食いしていれば病気にかかりやすい。そういう意味では病気になる方が人間にとっては自然なのでは……。

そうだよ、病気になるのは異常なことではない。

私は風邪をひいた。けれど、だから何だっていうの。みんなだって風邪くらいひく。大体、生まれてから一度も病気をせずに死ねる人間など一人もいない。幼児期までにあらかたの病気にかかり、免疫をつけて強くなっていくのではないか。

もちろん、風邪だってひかないにこしたことはないのだから、健康を保てるように努力は続ける。けれど、「病気になってはいけない」と緊張するのはやめよう。

病気になりたくはないけれど、病気になったらなったで仕方ない。そういうときは、マクロビオティックの知恵を使いながら治すことに徹すればいい。

マクロビオティックって、病気を治すために生まれたんだしね!

……と、最後には「病気のおかげでマクロビオティックは存在できている」というところまで思考が突っ走ったのだが、そこまで行ってようやく病気に対して気持ちが穏やかになったのだった。

健康至上主義、大いに結構。だけど、だからといって病気の人を見下したりするのは悲しい。

今は健康でも、どんなに気をつけていても、いつどんな拍子に病気になるかわからない。人間とはそんなもの。そのことを理解し、病気や病人に対して寛容な気持ちを持っていたい。

(2009.8.28追記:
なお、上述の「高熱と下痢、頭痛」をともなう風邪をひいていたのは今から一ヶ月ほど前のことであり、現在、ひどい急性症状は治まっているのでご心配には及ばない。体調を気遣ってメールをくださった皆様、ありがとうございました。)


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