マクロビオティックQ&A理論編

なぜ肉を食べない方が良いのか?

陽性である人間は陰性の植物を摂るのが陰陽のバランスを中庸に保つためには良いから。肉は薬類汚染されているものが多いから。また、癌になりやすい。

はじめに

「陰陽の考え方-無双原理・陰陽の特徴」で、マクロビオティックが植物食である根拠を以下の理由から説明しました。

・植物と人間(動物)を比べた場合、植物が陰性、人間は陽性である
・ゆえに、人間は、同じ陽性の動物を食べるよりも、陰性の植物を食べた方がバランスがとれる(マクロビオティックが目指すところの『中庸』が保ちやすい)。

マクロビオティックにおける肉食禁忌の理由は上記の理屈に尽きますが、本項ではさらに、桜沢如一氏が植物食について他に語っていたことや、マクロビオティック以外の客観的データも交え、なぜ肉食が好ましくないのかを改めて深く考察してみたいと思います。

食物アレルギーでなくても?

私は生まれつき肉の食物アレルギーを持っているので、食べれば湿疹が出ますから、自然と肉は避けて生きてきました。

しかしながら、もし食物アレルギーでなければ肉を食べてはいけない理由などない、本当はもっと肉を食べたいのに……と思っていました。

けれど、全人間に向けた理論であるマクロビオティックにおいても、肉は食べない方が良いということになっています。これを知ったとき、意外に思いました。私にとって、肉を食べてはいけないのは「食物アレルギーだから」。でもアレルギーではなくても肉は食べない方が良いとなると、理由がわかりませんでした。

確とした理由を知るべく桜沢如一氏の本を読み進め、はっとさせられる表現に出会いました。「植物はスベテの動物の母」……。

誤解する人もいるようなので念のため言い添えますが、植物が動物の母というのは、植物が動物を出産したという意味ではもちろんありません。

植物が動物の食物となり、体を、命を養ってくれているという事実を指しているのです。ちょっと想像すれば、確かにその通りです。

肉食動物は草食動物がいなければ生きていけません。草食動物を生かしているのは植物です。つまり肉食動物は、植物に生かされていることになります。

魚もそうです。大きな魚は小さな魚を食べますが、小さな魚は動物プランクトンを食べ、動物プランクトンは植物プランクトンをエサにしているのです。

いつだって、動物の大元には植物が必要です。

植物が動物を育ててくれている。そのような意味において植物は人間の母であり、人間は植物の子と言えるのは間違いありません。

人間は植物に育てられている

われわれの食物がスベテ植物またはその産物である』(*a)

『私どもは無機物をもって有機物を合成するコトもできないし、無機物を消化するコトもできない。しかし植物はイロイロな無機物を吸収してソレを複雑きわまる有機物----蛋白、脂肪、炭水化物等々に作り上げます。ソレはまったくの奇蹟です。』(*b)

『植物は、動物の栄養になるような実や葉や根をつくりつづけます。植物はスベテの動物の母です。(*c)』

『われわれがミドリしたたる森を散歩して快く、おちついた感じを得るのは、われわれが母の胸に抱かれた赤ン坊のように、森のミドリに包まれるからです。』(*d)

*a~*dの出典:桜沢如一著 『東洋医学の哲学』p.89~90

陽の人間には陰の植物

植物がすべての動物の母であると言われたときに、妙に腑に落ちるものがありました。私は緑の中を歩くのが好きで、機会を見つけては森へ赴くのですが、そのときに感じる穏やかな満たされた気持ちは、まさに母である木々(植物)の緑に優しく抱かれていると言うにふさわしいものです。

陰(植物)から生まれた陽(人間)。陽性である「人間」は、自分たちの直前の序列にある陰性の「植物」をとることが自然で、そうすれば陰陽のバランスがとれ、もっとも幸せに生きることができる(*)のでしょう。

考えてみれば、人間と植物は根本的なところで相補い合う関係にあります。人間は二酸化炭素を吐き、それを植物が吸い、酸素を供給してくれる。どちらが欠けても、どちらも立ちゆかない。このことを見るだけでも、人間と植物がゴールデンコンビであることがわかります。

人間にとっては、「植物」を命の源として食することが自然です「動物」は人間と同じ「陽性」なので、陰陽のバランスをとるための食物としては不向きですし、本来植物からとるべき栄養素を肉から間接的にとろうとするのは遠回りで体にも負担がかかります。

(*陰陽については、理論編『陰陽の考え方-無双原理・陰陽の特徴』参照)

化学的生産、汚染の問題も

また、肉食を避ける原因として、その肉の生産工程や汚染も問題とされています。

『鶏肉、豚肉、牛肉、バター、チーズ、ミルクなどの動物性食品は、すべて化学的に生産または加工されているので、避けること。野鳥や新鮮な魚介類ならあまり化学的に汚染されていないので、たまには用いてもよい。』(1)

つまり一般的に肉(動物性食品)は「化学的に生産または加工」されて、「化学的に汚染」されているから避けるべきということです。

化学的に生産とは、おそらく牛や豚が非自然的な環境(タグをつけられ一頭一頭小屋で管理されているような状態)で育てられていることを指し、「化学的汚染」とはそのような家畜の食べるエサの薬類(抗生物質やホルモン剤など)による汚染のことを示しているのだと思われます。

人間にとって、「動物を食べること」がそもそも自然ではない。その上、野生の(自然に生きている)動物ならまだしも、人為的に食肉として「生産」され、人間に都合の良いように(楽ができるように)加工されたエサで育てられてきた動物の肉を食べることは、不自然に不自然を重ねるようなものなのだと思います。

不自然なことを続ければ、心身に「病」という形となって異常があらわれてくるでしょう。それを防ぐためにも、肉は基本的に食べない方が安全なのです。

癌になりやすい

癌と肉食の関連性は科学的にも証明されつつあることです。

ガン患者の食歴を調べていくと、動物食(肉や魚、卵や牛乳などの動物性の食物)をたくさんとっていたことがわかりました。しかも、早い年齢で発病している人ほど、早くから動物食(とくに肉、乳製品)を多く、そしてひんぱんにとっていたことがわかったのです。』(4)

『胃癌の発症リスクは、総食肉摂取量(1日摂取量100g増加あたりのリスクの増加は 3.52倍)、赤身肉摂取量(1日摂取量50g増加あたりのリスクの増加は 1.73)倍、加工肉摂取量(1日摂取量50g増加あたりのリスクの増加は2.45倍)と有意な関連がありました。』(5)

肉を食べなければ癌にならないというような単純な話ではありませんが、肉を多く食べれば癌になりやすいのはほぼ確実です。

マクロビオティックは予防医療の最たるものです。病気の芽を摘んでおき、なるべく長い時間、生き生きと楽しく自分のやりたいことをやれる人生を目指すものです。

肉食を避ければ、肉食を続けたときよりも癌になるリスクは減るのです。

では、肉は「絶対」ダメなのか?

肉が体にあまり良くないであろうことは、マクロビオティックを学ぶ前から感覚的にわかっていたことではありました。やけに消化に時間がかかるし、油っこいし。 けれど、体に良くないとわかっていても、肉を食べたくなることもあります。テレビCMで流れるフライドチキンの映像に無性に誘惑されるときもあります。

そんなときどうしたら良いのか? 我慢に我慢を重ねるべきなのか? 誘惑に打ち勝ち、肉なしの生活に強制的に馴染んでいくことが正義の道なのか?

……結論から言うと、「そんなことはありません」。マクロビオティックは、誰に何を強制するものでもありません。「こうしたらより良い精神、肉体状態になれるよ」という指針です。それにどう従い、実行していくかは、まったく個人の判断に任されています。

『原則として植物の子である動物や人間は、(略)食物を植物に求めるべきです。これが元来の人間の食物の生物学的原則です。モチロン、人間は非常に大きなホトンド無限の自由をもっていますから、時と場合で、経済や地理や、感情の条件のために、この原則を破っても生きるコトはある程度は許されるし、またソレが必要な場合さえあります。 だからゼッタイ菜食者にならなくてはいけないとは言いません。』(6)

しかしながら、以下の桜沢如一氏の言葉も頭の隅にとどめておいてください。

『人間はイカナル条件の下においても植物性食品だけで、健康を樹立し、幸福な生活を営むコトができるモノであるということだけは認めなくてはなりません。』(7)

次項:未精製の穀物を主食とする理由

次項、「なぜ未精製の穀物を主食とするのか?…一物全体」で、マクロビオティックにおいて玄米を主食とするのが良いとされている理由を解説していきます。

(出典:(1)(3)桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック―自然の食物による究極の体質改善食療法』 p.71、82
(2)久司道夫著『マクロビオティックが幸福をつくる』p.100
(4)新谷弘実著『病気にならない生き方 -ミラクル・エンザイムが寿命を決める-』p.83
(5)医者から詳しく聞かされない医療情報「肉の摂取で胃ガンのリスクがどれだけ増えるか
(6)(7)桜沢如一著 『東洋医学の哲学』p.90)