マクロビオティックとは? その7「目指すあり方-中庸」

中庸-心身ともに陰陽のバランスがとれた、健康で幸せにあふれた状態。

中庸の心身を目指せ

マクロビオティックでは、「宇宙万物は陰陽より成る」と考えます。そして、その「陰」と「陽」がちょうど同じくらいの量で共存するバランスのとれた状態、「中庸」を目指します。

本当ならば、あえて目指したりしなくても、自然に中庸の状態でいられるはずなのです。野生の動物たちや植物たちが、誰に教えられなくても季節の巡りに合わせて自分たちの陰陽を調節して見事に環境に適応して生きているように、人間だって自分を中庸に保って生きる能力を持っているはずです。

けれども時代が進む中、食が不自然になり、判断力のくもりが生じ、欲(むさぼりの心)に負けてそれらを食べ続けた結果、「陰過多」「陽過多」の病的状態になってしまっている人間が多くなってしまったんですよね。それを正す方位磁石となってくれるのがマクロビオティックです。

陰過多、陽過多のジェットコースター

陰性にぐっと傾くと、気分が暗くなったり心配性になったりします陽性が過多になると、イライラしたり攻撃的になったりします

むしゃくしゃする(陽過多)のを抑えたいためにチョコレート(白砂糖:極陰)が食べたくなったり、元気が出ない(陰過多)から肉料理(強い陽)を食べたくなったりするのは体が自然にバランスを取ろうとしているからですが、極陽と極陰を行ったり来たりではいつまでも心の平穏は得られません。

荒波に浮かぶ小舟に乗っているような気分の高低を味わうのは心地よいものではありません。それを避けるため、マクロビオティックでは中庸の食物をとるように教えてくれています。人は、食べ物の固有のエネルギーや性質を自分に写し取ります。落ち着いた、穏やかな食物を食べれば、その通りの精神になるというわけです。

中庸の精神とは

陰にも陽にも偏っていないということは、イライラもせず落ち込みもしないことを意味します。中庸の食物をとるようにしているだけで、精神のブレ幅が少なくなり、とても平和な気持ちになります。

とは言っても生きた人間ですから、おもしろくないことがあればムッとしたり、悲しくなったりももちろんします。けれどそれは綺麗に凪いだ湖面に石が一つ投げられたようなもので、波紋は広がるけれど、わーっと拡散して、じきにまた元の姿に戻ります。

不快な感情が、すぐに流れ去るようになるのです。もともとが荒れた水面であれば、石が投げられたら余計に波立って、さらに収集がつかなくなるところです。

ビバ・平和な気持ち

ぼやけていたカメラレンズの焦点がピタッと合ったように、世界をありのままに見ることができるようになります。それまでずっと、いらぬ知識や感情でフィルターをかけて見ていた景色も、本来の鮮やかな色を取り戻します。そうなると、小さなことにもいちいち感動できます。

自然な食物をとるわけですから、地球や宇宙との一体感が生まれてきます。大きな大きな自然に抱かれている安心感、幸福感を覚えるようになります。どこにいても、何をしていても、楽しい気持ちです。そして一日の終わりには、自分の命が無事生かされたことに必ず感謝できるようになります。

「今、この瞬間」に生きるのが得意になります。遠く未来を想像すれば不安も生まれますが、瞬間だけ見つめていれば何も怖くはありません。

私はもともと取り越し苦労をするタチなので今でもふと将来のことを考えたりしますが、「え~いなんとかなるわい」とパッと切り替えられるようになりました。

玄米の、何にでも耐える逞しさが全身にみなぎってきているからでしょうか!

具体的な生理的変化

また、マクロビオティックを正確に一ヶ月続けるとあらわれる生理的変化について、桜沢如一氏はこうおっしゃっています。

(1)頭がすっきりして来ます。
(2)記憶力がうんと冴えて来る。
(3)つかれがなくなる。(朝早く目がさめる。風邪をぜったいに引かなくなる)
(4)根気がいくらでもつづく。
(5)夢を見なくなる。(いねむりをしなくなる。六時間以内のネムリで充分になる)
(6)判断力が敏速になる。
(7)実行力が大きくなる。
(8)作業能率がグーッと上る。
『君が、この自然的な、簡易な、神に近づく、正しい、伝統的な、食事を五、六年も(略)研究的な態度でつづけたら、君は美しい、健康な人になり、すばらしい記憶力と判断力を持ったおどろくべき人になって、幸福な一生を送るでしょう。』(*1)

荒れた時期を越えて……

私も数年前、努力していることがうまくいかず、精神的に非常に追いつめられた時期がありました。

自分の居場所がないと思いこみ、不安感で押しつぶされそうでした。胃腸の調子も悪く、一ヶ月半に一度は下痢をしていました。

そんな私ですが、今は下痢もせず、胃が丈夫になり、シャキシャキ元気に暮らしています。ひどかった時期に比べると、2つくらい次元が変わったところに生きているような感覚です。

気持ちが荒れたり、体調の悪い時期があった人の方が、マクロビオティックの威力を強く感じられると思います。

心身にあらわれる変化については、Q&A素朴な疑問編『体にはどんな良い変化があらわれるの?』に体験をまじえて詳しく書きましたので参考にしてみてください。

平和な気持ち+エネルギッシュ

(2008.11.11追記)
揺れの少ない精神状態を手に入れ、「これがきっと中庸の精神というものなのだ」と満足していたのですが、マクロビオティックを学び始めてから一年半後の2008年10月にさらなる変化を感じました。

ただ穏やかなだけではなく、やる気に満ちた、エネルギッシュさが加わったのです。詳しくは、マクロビオティックコラム『中庸で変わる心と体~サインは月経周期28日』に書きましたが、食べ物によって体が芯からととのってくると、心の内にあった情熱に磨きがかけられ、燃え上がってくるようです。

つまり、私の経験では、マクロビオティック実践による精神の変化には二段階あることになります。一段階目に至るのが、怒りも不安もすぐに去るような平和な精神状態。二段階目に至るのが、平和でありながらも情熱に満ちた状態。

ここから先もあるのかもしれません。以降も注意深く自分を観察していきたいと思います。

次項:マクロビオティックの十段階

次の項目(マクロビオティックの十段階…-3号食から7号食?)では、急に完全な穀物菜食に移行するのが難しいときに助けになる十段階のマクロビオティック食事内容をご紹介します。

(出典・引用(1)桜沢如一著『永遠の少年』p.122,123)