はじめに…マクロビオティックの概要

西洋食による病や薬で母を失った桜沢如一氏が、「病気で死ぬ人」をなくすために考案した実践的哲学。体も心も気持ちよくなるための食の方法を教えてくれる。

はじめに…マクロビオティックと出会ったあなたへ

「マクロビオティック」という単語に出会ったあなたは、好む好まざるに関わらず間違いなくマクロビオティックと縁があります!

そしてそれはとても幸せなことです。ラッキーです!

マクロビオティックを知れば、健康は増大するし病気は良くなるし気分は爽快だし、良いことがたくさん起こります!

「天国への鍵」とも言われるマクロビオティックの哲学に、どうか楽しんで触れてください。

マクロビオティックを一言で表すと

マクロビオティックとは何か?  一言で内容を表すと、「ちょうど良い心身の状態を保つための実践的哲学」となるでしょうか。

「ちょうど良い」は、「適度」「中庸」とも言い換えられます。

お風呂にも、ちょうど心地よいと感じる適温がありますね。季節の中でも春が気持ち良いのは、クーラーも暖房もいらない、じんわりと暖かで適度な気温だからではないでしょうか?

「ちょうど良い」のは「気持ち良い」のです。

そして、体も心も気持ちよくなるための食の方法を教えてくれるのが「マクロビオティック」です。

創始者:桜沢如一(さくらざわゆきかず)氏

日本古来の食のありかた(禅寺の基本的食事法)に健康の秘密を見出し、その原理、哲学を「マクロビオティック」としてまとめたのが、桜沢如一(さくらざわゆきかず)氏(1893~1966)です。

桜沢氏の少年時代の終わり頃、日本に西洋文明が流れこんできます。するとそれまでの伝統的食生活が崩れ、西洋流の食物や薬のせいで、桜沢氏はお姉さん二人、弟さん一人、三十歳のお母さんを亡くします。(*1)

十歳で孤児になった桜沢氏(注*1)は、自身も白砂糖のとりすぎで十五歳で肺・腸結核など多くの病気で苦しみ、死にそうになります。けれども十八歳のとき(注*2)に石塚左玄(いしづかさげん)(1851~1909)の「食養」(医食同源を提唱。陰陽調和・玄米主食・穀物菜食)(*2)という哲学を発見し、病気を克服します。

死の間際から生命を取り戻した桜沢氏は石塚左玄に感謝し、その一生を食養の研究と普及に捧げることを決めるのです。

そして、石塚左玄の食養を桜沢氏がさらに独自に発展させた形が、今私たちが恩恵にあずかっているマクロビオティックなのです。

マクロビオティックの語源

「マクロビオティック(macrobiotic)」という呼び名は、古代ギリシャで西洋医学の父ヒポクラテスが使っていた「偉大な生命」「長寿」を意味する「マクロビオス(makrobios)」を語源に持っています。(*3)

「マクロ(macro)」=大きな
「ビオ(bio)」=生命の、生き生きした
「ビオティック(biotic)」=生活法、若返り術
という意味があります。(*4)

「マクロビオティック」……。「食養」のままではなく、「マクロビオティック」という言葉を桜沢氏が新たに取り入れたのは、横文字のニュアンスを加えることで世界に通用するものにするためではないでしょうか。

「macrobiotic」ならば、英語圏の人が見てもなんとなく意味を推測できます。「macrobiotic」は、今では桜沢氏の作った食養道を指す言葉として普及しています。

桜沢如一氏の願い

後年、桜沢氏は、マクロビオティックにより健康を回復していく人を見て悲しい気持ちになるとおっしゃっています。本当はお母さんを助けたかった、どうして今、目の前で健康になっていく人が母ではないのか……と。

『あの若き母の病床の姿を、私は今もマザマザと思い出すことができる。今だったら、決して死なせはしない。きっと命を取りとめることができる。』(*5)

『ドーカシテ幼い子をのこして死ぬ母親がなくなるようにしたい、病気で死ぬ人をなくしたい』(*6)

ご自身の健康、ご家族の命と引き換えに得られたマクロビオティックという哲学には、桜沢氏のそんな切ない思いもこもっています。

現在の代表的推進者、久司道夫(くしみちお)氏

桜沢氏亡き後、その仕事を引き継ぐようにマクロビオティックを世界中に広める活動をしているのが久司道夫(くしみちお)氏です。現在はアメリカのボストンを拠点になさっています。(追記:久司氏はその後、2014年12月に逝去されました。)

久司氏は桜沢氏の直弟子。桜沢氏の著書にも、「総大将ミチオ」なんて呼ばれ方で、久司氏が登場したりしています。(*7)

久司氏は、桜沢氏の理論を基礎にしながらも、さらに現代的、科学的な目でマクロビオティックを読み解き、「クシマクロビオティック」という新たな境地を開いています。その一番の特長は、実践内容が具体的で(何をどのくらいの割合で食べたら良いかなどが細かく指示されている。*8)、それゆえに初心者でも実行が容易で間違いにくいという点にあります。

また、「望診」という、体にあらわれている状態で内臓の状態を推し量る漢方医学の技術や、「導引」という体操を取り入れているのも「クシマクロビオティック」独特のものだと思います。

桜沢氏からマクロビオティックの大元の哲学や理論、実践法を学び、久司氏の方法論でそれを盤石のものとするのが、マクロビオティックを自由に操れるようになるためにとても良い方法だと私は思っています。

(桜沢氏、久司氏の著作について、詳しくは『マクロビオティック本の紹介』をご覧下さい)

(桜沢氏と久司氏の教えにどのような違いがあるか、詳しくは素朴な疑問編『桜沢如一氏と久司道夫氏、教えの違いは?~前編』『桜沢如一氏と久司道夫氏、教えの違いは?~後編』をご参照ください。)

次項:マクロビオティックの目的

では、次の項目(マクロビオティックをする目的は?)から、具体的にマクロビオティックの哲学を学んでいきましょう。

(参考、引用;
*1桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』p.79/桜沢如一著『無双原理・易』p.222)
*2 wikipedia石塚左玄
*3久司道夫著『マクロビオティック食事法(上)』p.9
*4桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』p.7
*5桜沢如一著 『食養人生読本』p.214
*6桜沢如一著 『宇宙の秩序』p.27
*7桜沢如一著 『健康の7大条件』p.63
*8詳しくは実践編『マクロビオティック基本食の実践』参照

注*1:『ゼン・マクロビオティック』p.79からの情報。『宇宙の秩序』p.27には「13歳」と書かれている。
注*2:『ゼン・マクロビオティック』p.79からの情報。『無双原理・易』p.222には「19歳」と書かれている。