無双原理で楽しく生きる? その2-陰大きければ陽も大きい

陰と陽は互いに引き合い、片方が強くなればもう片方も強くなる。つまり、苦労が大きければ大きいほど喜びも大きくなる。大きな喜びを苦しみに転じさせないためには、自ら苦労を背負う。

ツリ合いの原則

前項、『無双原理で楽しく生きる?  その1-陰あれば陽、苦あれば楽』で、万物は必ず陰(ウラ)と陽(オモテ)二つの要素で成り立っており、陰(苦しみ)があるからこそ陽(喜び)が存在できると説明しました。

その陰と陽には、磁石のN極とS極のように、お互いを引っ張る力があります。陰は陽を引っ張ります。陽は陰を引っ張ります。

そして、引っ張る力は、その大きさに比例します。大きな陰は陽を引く力も大きい。大きな陽は陰を引く力も大きい。体が大きくなればより力が増し、重たいものも引っ張れるようになるのと同じです。

つまり、大きな陰は大きな陽を引っ張ってくるということです。大きな陽は大きな陰を引っ張ってくるということです。

「オモテ大なればウラもまた大なり」。

これを「ツリ合いの原則」と言います。(*1)「陰極まりて陽生じ、陽極まりて陰生ず」という言葉でも説明されます。

「ツリ合いの原則」を食物に当てはめると、「肉(陽の強すぎるもの)を食べるとアルコール(陰の強すぎるもの)が欲しくなる」などの法則が導き出されてきます。

では、人生における出来事に応用させて考えるとどうなるでしょうか?

弱いからこそ強くなれる

ツリ合い原則に照らせば、マイナスと思えることもすべてプラスに転じてきます。マイナスであればあるほど、大きなプラスを引っ張ってくると考えられるからです。

どん底だからこそ、目もくらむような高みに上れる。

何も持っていないからこそ、すべてを手に入れられる。

無力だからこそ、何物にも負けない力を持てる。

辛抱する時間が長いからこそ、報われたときには喜びの時間も長い。

大病をしたからこそ、健康の価値に心底から気づける。

弱さこそ強さ

未熟だからこそ、大きくふくれあがれる。

ツリ合いの原則を知り、私は、なかなか思うようにいかない時期を耐えることができました。陰が大きければ大きいほど、大きな陽が来る。だから辛くていいんだ。耐えてみせる。待ってみせる。いつか来る、大きな陽のために。そう思えました。

私の前を行く偉大な先輩を見て、自分はなんてちっぽけなんだと自信を失いそうになったときも、未熟ゆえ、小さいゆえの力を信じることができました。肥大しきったものはしぼむしかないけれど、小さなものは大きくなる力を秘めている。そう思うと開き直れて、自分の持てる力の限り頑張ればいいんだと勇気を奮い立たせることができました。

イヤなことがあればがっかりします。けれど、イヤなことであればあるほど、得るものは大きいはずなのです。

本当は、ダメージは一切受けたくないです。何にも傷つけられず生きていきたい。でも、試練は避けきれるものではありません。

しかし恐れることはありません。試練は光を引き寄せるのですから。 大きな苦しみが来たら、「これは大きな歓喜に転ずる可能性があるな。しめしめ」と、辛さにあえぎながらも、内心ほくそ笑みましょう。

苦しみをラッキーと思えたなら、不安や恐れが減って、世界に光が満ちてきます。

うまくいくことも、いかないことも、すべてを喜びととらえてたくましく生きていくコツを、「ツリ合いの原則」は教えてくれます。

大きな陽に気をつける

大きな陰が大きな陽に転ずる可能性を秘めているならば、その逆も言えます。

地位や、富や、名誉など、大きな陽を手に入れたとき、それを自分だけの利益にしようと固執して、ますますの陽を望んだりすると、あるとき急にすべてを失ってしまいかねません。

何かを成功させ大きな自信を得たのは良いけれど、自信が過ぎて傲慢になり、人を貶したりするようになってしまうと、今度は逆に人に向けていた視線が自分に向いて他者の評価が異様に気になりだし、自信をなくしてしまう恐れがあります。

健康もそうです。マクロビオティックは最大の健康への道ですが、それは、ウラを返せば「一歩でも半歩でもあやまったら、コレほどオソロシイ道はない」(*2)ということなのです。「最大の安全性は最大の危険性のウラ」(*3)なのです。

では一体、せっかく得た陽を陰に転じさせたくない場合、どうしたら良いのか?

適度な陰(苦労)を、自ら背負えば良いのです。

たとえば巨万の富が手に入ったら、それを自分のところだけに隠しておかず、何か人のために遣います。

何か成功したら、成功させてくれた周囲に感謝し、人のために自分の力を精一杯に役立てます。

マクロビオティックで健康になったら、そこにあぐらをかかず、実践を通して勉強を続け、健康を損なわないよううまく舵を取り続ける努力をします。そしてマクロビオティックを必要としている人に、その知識を分けてあげます。

「一粒万倍」という言葉があります。一粒の籾(もみ)は、万倍の実りとなって私たちに喜びをもたらしてくれます。この、米のような、周囲に幸せを与えて与えて、喜びをばらまく気持ちが大切です。

そうして陰を自覚的に取り込むことでバランスが取れ、幸せが持続するのです。

次項:アベコベの原則

以上、大きな陰(陽)は、それに見合うだけの大きな陽(陰)を引っ張ってくることを説明しました。次、「無双原理で楽しく生きる? その3-すべては移ろいゆく。始めあれば終わりあり。」で「アベコベの原則」を見ていきます。

(出典: *1桜沢如一著 『東洋医学の哲学』p.206
*2,*3桜沢如一著 『病気を治す術、病人を治す法』p.75)