マクロビオティック実践における留意点は?

一口50回以上噛む。体に良いものでも食べ過ぎない(量の害)。水分を取りすぎない。運動をする。

よく噛む

マクロビオティック食前の歌に「よく噛めよ」というものがあります。「♪よくかめよ たべものを かめよ! かめよ! かめよ! からだがつよくなる」(*1)

歌にまでされるほど、マクロビオティックにおいて「よく噛むこと」は重要視されています。

『あなたの体にとって健康的かつ必要な食べ物は、生涯にわたって飽きることがないほどおいしいものです。

少なくとも一口五十回はかむこと。マクロビオティックの哲学をできるだけ早く身につけたいなら、一口百回でも百五十回でもかむことです。(玉ネギ一切れを千三百回もかんだ少女がいます。)

ビフテキを注意深くかんでみなさい。すぐに味がなくなってしまいます。』(*2)

よく噛むことにより顎と歯が鍛えられるとともに、細かくなった食べ物が唾液のアミラーゼ(糖質分解酵素)と混ざり、胃で消化しやすい形になります。

胃に負担をかけず内臓を元気に保つことは、健康に生きていくための第一歩です。

逆によく噛まないと、消化作業のほとんどを胃に頼ることになり、内臓疲労を招きます。そして経験上、ころころ便になってしまいます。よく噛むとどさっとすっきり排便できます。(排便について詳しくは、マクロビオティックQ&A素朴な疑問編『体にはどんな良い変化があらわれるの?』参照)

食べ過ぎない

不自然なものは食べない方が良いのは当然だけれど、体にとって自然な良いものならいくら食べても大丈夫なのではないか、むしろ食べた方がより健康になるのでは? と思えることもあるかもしれません。

でもやはり、何事も行き過ぎはいけません。質も、量も、極端ではない「中庸」が一番良いのです。体に良いものでも、腹八分にとどめてください

『ある条件のもとでは二つの対立する要因が同一の結果を生じることもあり、 二つの正反対の結果が量の異なる同一の要因によって生じることもある』(*3)

つまり、条件によっては玄米菜食でもそうじゃなくても病気になることがあるし、同じ玄米菜食でも量によって健康でいられたり病気になったりするということです。

これは、言い換えれば、条件によっては肉食でもそうじゃなくても健康でいられるし、同じ肉食でも量によって健康でいられたり病気になったりするということです。

質においても量においても「中庸」であることを心がけさえすれば、究極、何を食べても健康でいられるということです。

反面、質または量において陰か陽のどちらかに大きくふれるような食事の仕方をすると、何を食べていても健康を崩すということです。

ですから、中庸を見極める目を養うことが非常に重要になってきます。マクロビオティックは、何が中庸か教えてくれます。十分に学び、考え、自身の生活に生かしていきたいものです。

また、大食は、「健康の七大条件」の一つである「ゆかいでたまらない」を阻害する「怒り」の原因にもなるようです。

『怒は奴レイの心とかく。奴レイは大食で、ムネに大きな憤怒を秘めている。(略)量は質を殺し、また生かす(略)大食は不消化を伴うから▽のガス(屁の臭い男に金を貸すな! という格言があるが、正しい)を出す』(*4)

運動をする

正しい食物を摂るのと同様に大切なのが、適度な運動をすることです。運動は、肉体にとって負荷です。負荷をかけることで肉体を鍛え、さらに頑丈で健康な体にします。

特別なトレーニングが必要というわけではありません。通勤の際にいつもより大股、早足で歩いてみたり、家の中で過ごすことの多い方でしたら掃除を一生懸命してみたり、できる範囲で体をなるべく動かすようにしてみてください。

良い汗をかいて、お腹を空かせて、美味しくご飯を食べましょう!

水分を取りすぎない

マクロビオティックでは、飲み物は控えた方が良いとされています。人間自体がほとんど水分で構成されている上、米や野菜からも水分をとり、さらに飲み物で多く水分をとると陰性過多になるからです。

『水分の多い人は軟弱です。(略)別に活動的でもないのに、飲み物をたくさんとる人は、次第に寒がりでグズっぽい臆病で弱い人(▽)になります。』(*5)

『より少ない飲み物で済ませられるようになることは、(略)どうしても必要です。(略)飲み物を控えるようにすれば--二十四時間以内に小用が男なら三回、女なら二回になるまでにすれば、マクロビオティックの効果はより早く、より強くなります。』

『水分を大量に摂取すると、腎組織の半浸透性の細い穴は縮んでしまい、(略)これでは事実上、腎臓はマヒ』

『飲み物を減らし、あなたの働きすぎて疲れている腎臓を休ませてあげなさい。』(*6)

この主張に関しては、あまりかたく考えず、「水を飲めば飲むほど良いというものではないんだな」とだけ覚えておけば良いと思います。喉が渇けば飲むし、渇いていないときは無理に飲まないという感じです。

水飲み健康法が向かない人に

昨今、水飲み健康法をよく見かけます。きれいな水を、一日1.5~2リットル飲むようにすると良いというものです。マクロビオティックを学ぶ前、私もこの方法を本で目にし、水をたくさん飲もうと試みたことがあります。けれど、うまくいきませんでした。

確かに水飲み健康法が向く方もいらっしゃると思うのですが、私の場合水をたくさん飲むことが苦しく、どんなに頑張っても一日に1リットルが限界でした。

1リットルの水を飲んだ日は膨満感がひどく、胃がカパカパいって、全身の毛穴が詰まったような気だるい感じになりました。

それでも水分のとりすぎが自分には合わないのだと思わず、「2リットル飲めないなんてダメだなあ」と自分を責めていました。

それが、マクロビオティックで「飲み物は少ない方が良い」と知って、とても気分が楽になりました。私は北海道生まれ北海道育ちで活動量も少ないので元から陰性が強く、水でさらに陰を補わなくても良かったのです。

現在、私が一日に飲む水の量は400ccもいっていないと思います(その他、味噌汁やご飯から水分をとっていますが)。活動量も少ない普段の生活においては、このくらいの水分量が私にはちょうど良いようです。

マクロビオティックの優秀献立

次項、「栄養学からも検証済み! 失敗しないマクロビオティック献立は?」では、具体的なマクロビオティックの献立をご紹介します。栄養計算もしてあるので、マクロビオティックが栄養学の観点からも問題のないことを実感していただけると思います。

(出典・引用:*1桜沢里真著『リマクッキング』p.183/ *2,*3,*6桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』p.72~74,p.86/ *4桜沢如一著『健康の七大条件』p.19/ *5桜沢如一著 『東洋医学の哲学』p.38)