マクロビオティックの理論と実践、どちらから入るのが良い?

個人の好みですが、最終的にはどちらもやった方が良いでしょう。理論と技術(実践)は両輪です。

理論から? 実践から?

マクロビオティックを始めるのに、まず理論から学ぶべきなのか、それともいきなり実践してみるか、迷う方もいらっしゃるかもしれません。

これに関しては、個人の好みに応じれば良いと思います。どんなことも、各人にそれぞれのやりやすいスタイルというものがありますね。

本で理論を学びながら実践も同時に進めたり、まず実践してから疑問に思ったところを調べてみたり、理論を集中的に学んでから実践に移してみたり、とにかく実践して体で感じたことを理論で裏付けたり。方法は様々だと思います。

ただ、心がけた方が良いと思うのは、最終的には理論も実践もどちらもやるということです。

理論と技術

『実用的な技術なき理論は無用であり、簡単明瞭な理論なき技術は危険である』(*1)。

『原理なき技術は危険です。モチロン技術なき原理は無用の長物』(*2)

上の二つは、創始者桜沢如一氏の言葉です。どちらも同じことを言っています。このことは言葉を変え、他の本にも出てきます。よほど大事なことなのだと思います。

マクロビオティックを学び始めて間もないころに、このメッセージは私に強く焼き付きました。そしてマクロビオティックにもだいぶ慣れてきた現在、理論と技術を両方身につけることの大切さをあらためて感じます。

私個人としては、特に理論はきっちり押さえておいた方があとあとのために良いと思います。

理論と言ってもそう難しいことではなく、無双原理の基本と、陰陽の見分け方を理解しておくだけでも良いと思います。(ただ、本を数多く読めば読むだけますますマクロビオティックが面白くなってくることは確かです)

「なぜ今、自分はその食べ物を食べるのか」ということがわかっていないと、食べ物の陰陽によって肉体をコントロールするというマクロビオティック独特の芸当ができません。

理論は避けて通れない

理論なんて必要ないのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

典座和尚の精進料理-家庭で楽しむ110レシピ』にも、精進料理は『難しい理屈はともかく、いますぐに実行すること』(p.3)が大切であるということが書かれていました。

毒矢が刺さった人に対し、その矢の吟味をするより先に早く矢を抜いて治療するのが大事と説いたお釈迦様の話を踏まえての提言です。

『実践を続ければ、必要な知識や技術は自然と身につくものです。』ともあります。精進料理はマクロビオティック料理に通じるものがあるので、人ごととは思えず読みましたが、少し違和感が残りました。

確かに、「まずやってみる」ということは大事だと思うのです。百聞は一見に如かずですから、とりあえずやってみることによってわかることはたくさんあるでしょう。

ただ、それだけでは、知識や技術は身についても、理論までは身につかないのです。理論はどうしても勉強する必要があります。

マクロビオティックがスポーツなら、実践重視でも良いかもしれません。ですがマクロビオティックは東洋医学の範疇に入るものです。本気で取り組むのであれば、理論の学習は避けて通れないでしょう。

しかしながら先の例で言えば「毒矢が刺さった人」である「重病人」に対しては、何はともあれまず実践というのが必要になってはくるでしょう。

理論を学ぶことの弊害?

ただ、理論を学ぶということは、色んなルールや法則で頭がいっぱいになるということも意味します。

特にマクロビオティックの陰陽理論を使うと、どこまで突き詰めても陰陽に分けられてしまうので、こだわりすぎるとひどくイライラしてきます。

たとえば同じ大根でも、北海道と千葉で採れたのでは北海道で採れたものの方が陽性です。しかし北海道でも産地がより北であればもっと陽性ですし、一本の大根でも上は陰性下は陽性、千切りとみじん切りならみじん切りの方が小さく細かいから陽性、生より火を通すと陽性、でも切り干し大根にするともっと陽性……と、かなりキリがありません。

理論と実践の両輪で

ここで大事になってくるのが実践なのです。実際に大根を調理して食べることで理論を確かめるのです。そして確信できたことだけ、自分なりの理論として定着させます。

たとえば私は、大根の陰陽を考えて食べようとするとき、陽性が強い順に「火を通した切り干し大根>火を通した大根>生の大根」くらいの分類しかしていません。産地、上下、切り方などは無視できる範囲だと、実践を通して感じたからです。

果物については、理論が実践で実証された形となり、食べる量を減らしたり塩をかけるようになりました。

このように、どちらに偏ることもなく理論と実践の両輪でマクロビオティック街道を驀進していけば、ひたすらに考えたり実験したりの日々を越え、やがて自分だけの楽しく自由な境地へたどり着けると思います。

どちらから先に、どのように、どんなスピードで……といったことは各人の自由です。焦らずに、ご自分のペースで、理論と実践をバランス良く取り入れていっていただけたらと思います。

次項:マクロビオティックが辛い

次項食べたい物も食べられず、マクロビオティック実践が辛いでは、マクロビオティック実践が苦しい場合の対処法をお伝えします。

(出典・引用:
*1桜沢如一著『ゼン・マクロビオティック』p.29
*2桜沢如一著『東洋医学の哲学』p.92